「チャイルド・ライフ」とは?
医療は、大人の都合で動いています。
医療の世界に入ってしまうと、子どもは自分のことなのに自分で決められず、不本意な苦痛を強いられることも多いのです。
チャイルド・ライフとは、そうした子どもにとって、医療体験が、少しでも痛くない、怖くない、楽しいものになるように子どもの目線に立って支えようとする考え方のことを言います。
1950年代から医療を受ける子どもへの心理社会的な影響が注目されるようになり、北米を中心に普及が進んできました。
CLS(チャイルド・ライフ・スペシャリスト)とは?
チャイルド・ライフの考え方のもと、実際に子どものサポートを担う医療スタッフです。
Child Life Specialistの頭文字から、“CLS”とも呼ばれます。
主に北米の大学院に設置されているチャイルド・ライフ専門課程を専攻し、実習、研修、インターンシップを経験したのち資格認定試験に合格するとCLSとして認定されます。
認定後も専門職としての知識、技術、そして価値観を維持するため、再研修、または再試験により認定を更新していく必要があります。
1970年代まではそれぞれの病院が独自に育成してきたCLSですが、1986年には正式な認定制度が発足、1989年には国連で「子どもの権利条約」が採択され、CLSは医療を受ける子どもの権利を擁護する職種として急速に発展しました。
詳しくはこちら↓
CLSが行っていること
子どものニーズに即した遊び
安心感を得たり、感情を吐き出したり、苦痛を和らげたり、医療への理解を深めたり・・・、病院でも子どもは遊びを通して様々な力を発揮します。
その遊びの種類にも感覚を刺激する遊び、意識を集中させる遊び、能動的に表現する遊びなど、様々にありCLSはひとりひとりの子どもに合わせて必要なとき、必要なだけ適切な遊びをアレンジします。
病気そのものや治療の進め方に対する心の準備
病気の診断を行うのも、治療の方法を決めるのも、まわりの大人です。
しかし、子どもも子どもなりに自身の状況を理解して納得しておく必要があります。子どもの気持ちに即して、話したり、聴いたり、ときには写真や模型を用いたりして、子どもが疑問や誤解に混乱することがないようサポートします。
検査や処置に対する心の準備
初めて見る物、初めて会う人、見慣れない道具、機械に、新しい体験・・・、そんな病院のなかで、子どもは医療に出会います。
どんなところへ行くのか、どんな人に出会うのか、どんなことをするのかなど前もって知っておくことで、また、そのときの対策を考えたり作戦を立てたり予行演習をしたりすることで、少しでも緊張や興奮を和らげられるようサポートします。
検査中や処置中の支援
苦痛や負担を伴いがちな医療行為の最中にあっても、ずっと子どもの隣りにいて子どもに見えるもの、聞こえるもの、感じられるものをコントロールしながら、それぞれの状況に応じ子どもが一人ぼっちにならないように、子どもの頭のなかが不安や恐怖でいっぱいにならないようにお手伝いします。
子どもを囲む環境の調整
病院では、“子どもが医療に臨むこと”よりも、“医療者が医療を施すこと”のほうが優先されがちです。
そのせいで、“手術室の前で待たされる時間”、“あちこちに痛そうなものが見える空間”というような、子どもには耐えがたい環境が出来上がってしまうのです。
医療者には見慣れた景色を子どもの視点から捉えなおし、子どものための時間や空間を提案することもCLSの役割です。
※ご家族へのお願い
CLSは人員が限られており、病院を訪れるすべての子どもたちに出会える体制には至っておりません。ご理解いただけますようお願い致します。
なお、当科では検査や処置を理解しはじめる4~5歳以上の子どもが、腎生検、心臓カテーテル検査、骨髄検査など、特に不安が高まりがちな検査や処置を行う場合には、優先的にCLSがサポートを行うことになっていますが、予定された日時や場所によっては他の予定と重なり、CLSが不在となることもあります。
そのため「僕(私)のところにだけCLSが来てくれない」ということも起こりえます。
CLSによるサポートを希望される方は、予定を立てられる際にあらかじめ主治医にご相談ください。
CLSの紹介
上田 素子
Motoko Ueda
病院では医師、看護師、技師、療法士など、様々な医療を担う人たちが働いています。
どの人も、うまく検査や治療を施して子どもたちが少しでも気持ち良く過ごせるよう力を尽くしています。
それでも医療環境のなかにおかれた子どもたちには、痛いことに腹が立ったり分からないことを不安に思ったり、いつもと違う環境が嫌になったりと様々な感情が湧いてきます。
そうしたときに遊んだり喋ったりすることによって、子ども自身が苦痛や負担を減らせるよう手助けする人がチャイルド・ライフ・スペシャリストです。
病院が子どもにとって少しでも痛くない、怖くない、楽しいものになるよう他のスタッフと協力しながら、出来る限りのサポートをしたいと思います。